室内空間に存在する木は周囲の湿気が多い時には余分な湿気を吸収し、逆に部屋の中が乾燥している状態では内部から水分を放出します。これを「調湿作用」と呼び、人間が暮らす環境として快適であり、且つカビやダニ、ウイルスなどが発生しにくいとされる60%前後の湿度を保とうとします。
高温多湿の日本では、古来から木の特性を活かした家屋が作られてきましたが、調湿作用を持たないコンクリート造の住宅やマンションが増えた昨今、改めて木が持つ調湿作用の有用性が見直されています。
僅かなスパンでぎっしりと架けられている「登り梁」。この圧巻とも言える存在感や、しっかり守られているような安心感が得られる意匠としての登り梁も一ノ邸の特徴です。この登り梁が室内空間に対し大きな表面積を持っているので調湿作用が期待できると考えています。
赤ちゃんマウスを木製の飼育箱、金属の飼育箱、コンクリートの飼育箱の3種類に分けてその生存率を調べたところ、木製の飼育箱の生存率が85.1%と圧倒的に高い結果だったという実験データがあります。体温を奪いにくい保温性と、汗をある程度吸収する吸湿性が快適な空間をつくりだしたためと考えられます。
(引用:「生命を育む」静岡県木材共同連合会発行 )内装材に木材を「0%」「45%」使用した各部屋で実際に寝てもらい、睡眠の質にどのような影響がでるか実験したところ、内装に木材を使うことで熟睡時間が増加したという結果があります。適度に木材が使われている空間で暮らすことは、快眠や疲労感減少にも寄与する可能性が示されています。
(出展:空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集